鈴の栞
どうして私、こんなところにいるのだろう。私は一体、何をどうしたいのだろう。
「俺、木村センセに怒られちゃってさあ。『お前のせいで現代の子供の図書館離れが進む!』だって。それ酷くない?」
「………」
「……ネコちゃん、何か言ってよ」
ここ、図書室じゃないんだからさ。……段々と元気がなくなっていく先輩の声を聞きながら、私はまだ口を開けずにいた。
わからない。何もわからない。何もかもが初めてで。
テリトリーの壁を崩されたのも、誰かに対して感情的になったのも、誰かにあだ名で呼ばれたのも、こんなにやるせない思いになったのも、……全部初めてで。
このどうしようもない気持ちが一体何なのか、私には。
「……ネコちゃん、俺さ、」
「―――わからないんです!」
突然声を出した私に、先輩は口を噤む。途端、視界がぼんやりと滲んだ。
「……なんでこんなふうになってるのか、自分でもよくわからないんです!でも、先輩には会いたくなくて……イライラするんですよ先輩の顔を見ると!」
「ネコちゃん、何気にそれひでえ……」
たじろぐようなその声に。何かが吹っ切れた私は、ようやく彼の方を向いた。