鈴の栞
「そうですよ先輩のせいですよ!先輩がいるから私は自習室なんかに行く羽目に、」
「……自習室に行ってたの?」
「そんなことは今どうだっていい!」
噛み付くように言ってのける私に、先輩はふわりと微笑んだ。伸びてきた腕に優しく頭を撫でられ、私は思わず言葉に詰まる。
「やっぱネコちゃんはこうでなきゃなー」
「………はい?」
「俯いて黙ってるネコちゃんなんか、全然面白くねーもん。あんたは多少反抗的な方がカワイイ」
「かっ、かわ……?!」
初めて言われた言葉に、顔がどんどん熱くなっていく。顔真っ赤、と笑いながら私の頬に触れた先輩の手を、思い切り叩き落とした。
「……馬鹿にしないで!」
「えぇー、馬鹿にしてないよ。ネコちゃんかっわいー」
言いながら、先輩は私の身体を横から抱きしめる。腕の中に閉じ込められ、さらには髪もくしゃくしゃに撫でられ、私の心臓は爆発寸前だ。
「か、わ、いくなんか……」
「ん?」
「可愛くなんかないっ!」
どん、と強くその胸を押せば、いとも簡単に先輩の身体は離れていった。ぬくもりを失ってもなお、私の顔は熱く火照り続けている。