鈴の栞
 


「親戚も多少お金出してくれたりしたけど、貰いっぱなしってわけにもいかないだろ?だから俺もバイト始めてさ。あ、ちゃんと学校には許可貰ってるから。一応ね。……まあ中卒の男が働ける場所も限られてるからさー、高校までは卒業させてもらって、後はもう就職してしまおうと思って。大学行くのも金かかるし。だから大学受験はなし!ってわけよ」

「………」
「わーちょっとネコちゃん、黙んないでよ。引いちゃった?」
「そんなこと……」

 引いただなんて、そんなことはないけれど。……でも、意外すぎて。
 こんないつもニコニコしていて調子のいい男に、そういう家庭事情があっただなんて。見た目からは想像もつかない。

「でも……奨学金とか貰えば、大学にも行けるんじゃ……」

 こんなこと、言っていいのか悪いのか。内心ビクビクしながら口籠もるようにそう問えば。先輩は明るい声で否定した。

「それ、親戚からも言われた。せっかく進学校に行ってるんだから奨学金取れば、って。……でもそれってさあ、詰まるところ借金だろ?俺そういうのってあんまり……ていうか、他のとこから金借りてまで進学したいとは思わないわけよ、俺は」


 
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