鈴の栞
六頁
翌朝の気温は氷点下。ニュースの天気予報では午前中の降雪が濃厚視されていたが、やはり天気予報士はすごい。
午前中どころか、放課後になっても吹雪のような粉雪は止みそうにありません。……これって予報は当たってるの、それともはずれてるの。
「さむっ……」
マフラーで口元まで隠しながら屋外通路を小走りに進み、館内へと急ぐ。飛び込むように図書室のガラス戸を開けば、八番テーブルに見慣れた茶髪の彼の姿があった。
「あ、ネコちゃん!ちゃんと来たね。おかえり」
「……ただ、いま……です」
ぼそぼそとマフラーの中で呟く私に、手嶋先輩は嬉しそうに笑いかける。……なんかこれ、くすぐったい。
とはいえ、やっと古巣に戻ってこれた。やっぱりここが一番落ち着く。二度と自習室なんかに行くものか。
「……ねえ、ネコちゃん」
「何ですか」
「今日さ、俺の隣に来ない?」
例のごとく先輩の斜め向かいの席に座り、鞄から勉強道具を取り出していると。やたらと甘ったるい声でそう言われた。
「となり、って……どうしたんですか、急に」
「んーん、別にどうもしないけど。ちょっとそんな気分になっただけ」
「……嫌です」
「ええーっ?!」