鈴の栞
あまり派手に騒げない図書室の中、私と先輩が静かに攻防を繰り広げていると、突然「いてっ」と先輩が頭を押さえ出した。……あれ、今私頭は殴ってないよね?
「ちょっと手嶋くん、図書室で不純異性交遊はやめてくれるかなあ」
聞こえた声に後ろを振り向くと、そこには呆れ顔の木村先生が立っていた。
「木村先生、」
「久しぶり、飯山さん。元気だった?」
「あ、はい……」
「なーにが『元気だった?』だよ。あんたが連れ戻してこいって言ったんだろ」
「結局お前が原因だったんだろう?こっちとしては迷惑極まりないよ、本当に」
私を間に挟み、手嶋先輩と木村先生が火花を散らし合っている……ように見えるのは私だけでしょうか。
ていうかこの面子での会話、なんだかデジャヴ……。
「連れ戻したんだからもういいだろ。それより、暖房の温度早く上げろよ。この席ですら超寒いんですけどー」
「口の利き方がなってないよ手嶋くん。ここ、一応学校でしょう?」
「……暖房の温度、早く上げてく・だ・さ・い!」
噛み付かんばかりの嫌味な敬語を吐き捨てる手嶋先輩に、苦笑してみせる木村先生。やれやれと肩を竦めるその姿は先生というより……まるで、付き合いの長い友達のようだ。