鈴の栞
木村先生と手嶋先輩は全く似ていないと思っていたけれど、それは違っていた。やっぱり二人は血の繋がった従兄弟だ。
一緒にいると、心が晴れやかになる。彼らのペースに身を任せていると、いつの間にか笑顔になっている。
纏う雰囲気は違えど、二人は確かに、家族なのだ。
「これからも暁人のことをよろしくね、飯山さん」
「………え?」
「……あれ、きょとん顔?僕フライングしたかなあ」
「え、何ですか?」
目をしばたく私に、取り繕うように木村先生は笑ってみせる。……何なんですか、その意味深な笑顔は。怪しい。
「ううん、何でもないよ。それより暁人はまだ来ないのかなー、……お、噂をすれば」
先生の声につられて、図書室入口を見れば。―――ガラス戸を開けて室内に入って来た手嶋先輩が、剣呑な目つきでこちらを睨んでいた。
「……なんで木村センセがネコちゃんと一緒にいるわけ」
「さあ、どうしてでしょう」
「ふざけんな。何話してたんだよ」
「あっきーには言えないヒミツのあれやこれだよ」
「……!てっめ、」
近付いて来た途端、あからさまに敵意を剥き出しにする手嶋先輩と、大人の余裕でうまく彼を手玉に取る木村先生。……この二人って、何だかんだで相性がいいと思う。