鈴の栞
「そ?……ま、いいや。それよりさ、ネコちゃん見てこれ」
私の必死の否定を半信半疑ながらも認めてくれた先輩は、横に置いた鞄の中から小さな箱を取り出した。
蓋を開いてお目見えしたのは、校章が彫り込まれた金色のメダル。照明の光を反射して、キラキラと輝いている。
「うわあ、キレイ……」
「これねえ、三ヵ年皆勤賞の記念品。三年間ずっと無遅刻無欠席、受験しなくても真面目に学校に通ってた証拠」
「三年間、ずっと……」
このくらいは取っておかないと悔しいからね、と笑う先輩が、……毎日毎日、深夜までずっとバイトをし続け、ろくに睡眠時間も取れなかったであろう彼が。このメダルを貰うのがいかに大変であったかを、私は知っている。
「もう最後の方なんか受験対策授業ばっかだし、正直学校行くのやめようかなーって思ってたんだよね。卒業の単位はとっくに取れてたからさ。学校休んで、バイトを朝から晩まで入れてもいいかなって。……でも」
先輩は不意に、メダルを持って眺めていた私の手を握った。先輩の体温は、いつも私よりも少し低い。
「ネコちゃんに放課後会えると思って、ラストスパートも頑張れた。ありがとう、ネコちゃん」