鈴の栞
「あんた二年?この問題集、俺らんときと一緒だ」
席について勉強道具一式をテーブルに広げると、すぐさま茶髪の彼が食いついてきた。手に取った化学の問題集をパラパラとめくり、「あーこれやったわ」と懐かしげに笑う。
……ということはやっぱり。
「……三年生?」
「俺?そうそう、三年」
「……へえ……」
ケロリとそう言って頷く彼を、私はじっと睨みつけた。……なんか、胡散臭い。
だって三年生といえば、今がちょうど受験シーズン真っ只中じゃないですか。図書室でぐーすか寝ている余裕はないはず。
あ、それとも、この人も図書室勉強派?もしかしたら仮眠をとっていただけなのかも。……その割には、彼の勉強道具がどこにも見当たりませんが。
「ああ悪ィ、お勉強の邪魔か。もう話しかけねえから、どーぞごゆっくり」
「えっ、あ、いや別に……」
私が、鬱陶しいから睨みつけてくると思い込んだらしい彼は、ひらひらと手を振ってみせるとそのままテーブルの上に頭を落とした。組んだ腕の中に顔を埋めたその格好は、本格的に寝る体勢。
え、また寝ちゃうの?
「………」
まあいいか。この人が寝ようが勉強しようが、私には全然関係ないしね。
化学の問題集を付箋の貼ってあるページまでめくり、私はカチカチとシャーペンを鳴らした。