鈴の栞
これを運命と呼ぶのは、差し出がましいだろうか。
―――例え、ただの偶然であっても。私はそれによって変わることができた。誰かと受け入れ合うという幸せを知ることができた。それだけで。
本当にそれだけで、十分すぎるくらいだ。
出会えて良かった。あの日、先輩の斜め向かいの席に座って本当に良かった。……だから。
「あの……先輩」
「んー?」
「これ、」
私はおずおずと自分の鞄から小さな紙包みを取り出し、先輩に差し出した。首を傾げながらそれを受け取った先輩は、包みを開いていく。
やがて白い紙の中から、鈴の付いた赤い五角形のお守りが顔を出した。
「ネコちゃん、これは?」
「あの、家内安全とか商売繁盛とか色々あって悩んだんですけど、……巫女さんにそういうご利益が全部入ってるのはこれだって言われて」
今年の正月に初詣に行ったとき、卒業する先輩の未来に幸多かれと祈り、このお守りを購入したのだった。花の刺繍と金色の小さな鈴が可愛いが、千五百円もした。……ご利益の多いお守りはやっぱり値段が可愛くない。
「俺のために選んで買って来てくれたの?」
「はい。で、……あの、良ければいつも身につけといてあげてください」
千五百円もしたんで!という言葉を飲み込んで笑いかける。……途端、身体がふわりと温もりに包まれた。