鈴の栞
 


 図書館の玄関を出て、すぐ横にある多目的広場を覗いてみると。そこで木村先生と何人かの卒業生たちが談笑していた。見たことのある顔ぶれだから、きっと図書館によく来ていた先輩たちだろう。

「あ、二人とももう帰るの?」

 私たちに気づいた木村先生がこちらに手を振ってきたので、私も振り返していると、……隣の手嶋先輩はやっぱり面白くなさそうな顔をした。

「どうだったー?手嶋くん」
「……何がだよ!」
「ああそう!良かったねえ」

 にこにこと笑ってみせる木村先生には、きっと全部お見通しで―――さっき私に「暁人をよろしくね」と言ってきたのも、多分そういうことなのだろう。
 了解しました、の意味を込めてもう一度先生に手を振っていると、いきなりその腕を乱暴に掴まれた。

 先輩に強引に引っ張られるように、その場を後にする。


「……どうしてそんなに木村先生のこと嫌いなんですか?」
「……ガキの頃からの付き合いだから、色々あんの。あいつ、年上ぶっててウザいんだよ昔から」
「実際かなり年上ですけどね」
「ネコちゃんまでそういうこと言わない!」

 校門を出て並んで歩きながら、私は苦笑する。……木村先生の方は、手嶋先輩のこと大好きだと思うけどなあ……。


 
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