心さん、そろそろ俺にしませんか?
それからのコイツの行動パターンはトイレへ逃げ込む、だ。
「俺トイレ行く!ついてくんなよっ」
分かってるし行かねぇから。早く行けよと手で払った後、近くの石段に腰掛けた。
負けたくなくてもどちらけが負けちまうもんだもんな、勝負の世界って。
「原田か?」
昨日の負けたショックのおかげで、俺は心さんの声が聞こえてしまっているみたいだ。
「おい、無視か!」
バシッと頭を叩かれた。左斜めに人影がある。顔を上げると心さんがいた。
え?幻聴も聞こえて、今度は幻覚まで見えてる?
「何ポカンとしてんだよ。あたしだぞ、忘れたか?」
「わ、忘れてないっす……けど……なんでココに?」
休日なのに制服姿の心さんに問う。
「あぁ、応援に来たんだ!西川の」
西川先輩かよ。てことは、サッカー部も勝ち上がってたんだ。
「ん?お前なんで制服着てんだよ。試合じゃねぇのかよ」
あ、気づきましたか。