心さん、そろそろ俺にしませんか?
「そ、れ、に!お前実は嬉しいんだろ?」
「え?何が」
「外周だったら、心さんが見られるじゃん」
ギクリ。
「そ、そんなんじゃねぇしっ」
「どうだか。あっ、心さんだ」
顎であっち、と示すイチの方をつい、素直に向いてしまった。
「はっは~ん、残念。嘘~」
「……うぜぇ」
「ほら、走るぞ。武道館前だからキャプテンからも見えんだし」
少しの間だけ、頭の中の心さんの気配を消して武道館前を通った。予想通り、キャプテンが首を伸ばして俺たちを見ていた。
恐るべし、キャプテン。
「ふ~怖かった」
武道館を過ぎると、少しだけスピードを落としたイチ。俺も自然と速度を落とした。