心さん、そろそろ俺にしませんか?
タッタッタッ……
俺とイチの足音の他に、心さんの足音も同じように響く。少しずつ近づく距離に足音だけでなく、胸の高鳴りまで大きくなっていく。
あと少し。あと……というところで、俯いていた心さんが顔をあげた。俺たちの足音に気づいたみたいだ。
俺たちを見ながら、動かす足を止めない彼女。俺も心さんから目を離せないまま、前へ進む。
俺に気づいてんのかな?でも、ちゃんと話したのは前だし……覚えてねぇよな。
話しかけてくれるかも!と期待しても、そう考えると一瞬で無理だよなと落ち込んでいる俺がいる。
でも、今日は奇跡が起きた。
「ねぇ!」
心さんが足踏みをしながら、俺たちに話しかけた。……いや、きっと自惚れじゃなくて俺にだと思う。
嘘だろ。
心さんが声をかけてくれた!?