心さん、そろそろ俺にしませんか?
クリスマス当日。
「優生おはよう!」
「はよ」
朝、7時半。肌寒さを感じて目が覚め、のろのろと顔を洗って着替えをすませ、リビングへ向かうと、エプロンをした母ちゃんの姿があった。
「母ちゃんね、気合い入れてご馳走作るから期待してて!」
「…………おー」
返事をしてテレビのリモコンを手に取り、ボタンを押した。
『今日はクリスマスですね~』
画面で、クリスマスツリーをバックに、着飾った女のキャスターが微笑んでいる。ちらほらカップルの姿も見える。
「世間もクリスマスか」
仕事の格好をした親父が欠伸をしながら、椅子に腰掛ける。そんな親父に大きめの弁当箱を渡す母ちゃん。
「はい、お弁当。今日も頑張ってね!」
「おう。早めに仕事終わらせるぞ」
いい年した両親が目の前で、今夜を楽しみにしてデレデレしている。さすがに、息子の俺はその光景を見ていたいとは思わない。
「部活行ってくる」
焼きたてのパンを口に含み、家を出た。