心さん、そろそろ俺にしませんか?
深く息をして目を開ける。俺の目の前にはなんと……佐原先輩。
「……監督、1年じゃないんすか?」
「お前なぁ、試合は1年同士だけじゃないんだぞ?佐原や先輩とすることにも慣れろ」
どうしよう、心構え出来てなかったし、すごく緊張してきた。
「原田、変わってもいいぞ、1年に」
そう言った佐原先輩。嫌味にも聞こえるその言葉。俺は頷くわけがなかった。
「佐原先輩が、いいです」
─────☆
「はじめ!」
ダンッ
佐原先輩が武道館の床を蹴り、俺へ向かってくる。緊張で俺の足は動いてくれず、無我夢中で竹刀を盾にした。
「原田!おら、いけー!」
心さんの声援も聞こえてくるけど、ゆっくり聞く暇がない。
バシッ!バシッ、バシッ!
速い。俺が動こうとしても、先に読まれていて手出しが出来ない。
クソッ、今までだって先輩としてきた。慣れているわけじゃないけど、それなりに試合が出来た。
だけど、今はなんだ?