心さん、そろそろ俺にしませんか?
「……早くやって終わらせよう!」
「おー」
制服に着替えていたので学ランを脱ぎ、袖を捲ってぞうきんを手にする。
「いつもはみんなでやってんのに変な感じ~」
よし、行くぞ!と雑巾掛けを始めた俺達。一列終えたところでイチがそう呟いた。
「……だな」
今までは特に気にしていなかったけど、意外と武道館は広い。それを2人で掃除。こりゃ大変だ。
「はぁ~!雑巾掛け終了!」
12月で寒いはずなのに、体温は上がって額には汗が浮かんでいた。
「思ったんだけどさ」
「あ?」
「正座とかよりも、最もな反省をした気がする!」
それは俺も感じていた。普段使っている武道館を、俺達だけで掃除する。当たり前のことだけど、心が洗われた気がする。
「もう真面目にしねぇとな」
「おう。このままじゃダメだな」
外にある水道で雑巾を洗いながら笑い合う俺達。掃除をする前の俺達は、きっと試合に勝てない。
でも、今なら佐原先輩にも勝てそうな気がした。