心さん、そろそろ俺にしませんか?
「反省したか」
すると、予想外の人物が目の前に立っていた。それはなんと佐原先輩だった。
「え、あ、う、はいっ」
「噛みすぎ。なぁ、ブチまだか?」
「ま、まだ監督のところです」
「おー、そうか」
や、やべぇ緊張感。イチもガチガチになりながら佐原先輩を見てるし。
「あ、原田」
「はいっ」
「お前、あがり過ぎ。もうちょっと冷静にしろ」
え?何のことかわからず、佐原先輩の顔を凝視する。
「試合。先輩って意識すんじゃねぇ。ただの敵だと思え」
そして正門へ向かった佐原先輩。
「佐原先輩が……優しかった」
「え?あれ優しいかったか~?俺は怖くてたまんなかったけど?」
やれやれといった顔で雑巾を片手に武道館へ向かったイチ。俺はその場に立ち尽くして、佐原先輩の背中を見送った。
絶対、いつか勝てるようになってやります。
「あれ?原田じゃん!」
ドキッ!
一瞬にして、俺の小さな決意は消え去り、呼んだ主の方へ意識が飛んだ。