心さん、そろそろ俺にしませんか?



「反省したか」


すると、予想外の人物が目の前に立っていた。それはなんと佐原先輩だった。


「え、あ、う、はいっ」


「噛みすぎ。なぁ、ブチまだか?」


「ま、まだ監督のところです」


「おー、そうか」


や、やべぇ緊張感。イチもガチガチになりながら佐原先輩を見てるし。


「あ、原田」


「はいっ」


「お前、あがり過ぎ。もうちょっと冷静にしろ」


え?何のことかわからず、佐原先輩の顔を凝視する。


「試合。先輩って意識すんじゃねぇ。ただの敵だと思え」


そして正門へ向かった佐原先輩。


「佐原先輩が……優しかった」


「え?あれ優しいかったか~?俺は怖くてたまんなかったけど?」


やれやれといった顔で雑巾を片手に武道館へ向かったイチ。俺はその場に立ち尽くして、佐原先輩の背中を見送った。


絶対、いつか勝てるようになってやります。


「あれ?原田じゃん!」


ドキッ!


一瞬にして、俺の小さな決意は消え去り、呼んだ主の方へ意識が飛んだ。



< 142 / 387 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop