心さん、そろそろ俺にしませんか?



ごめんな、と何度も謝る心さん。


謝罪の言葉は聞きたくないです。欲しいのは、こころさんからの好きという言葉だけ。


「今度」


「え?」


「また今度、誘ってください」


だから俺は、あなたが笑顔になれる言葉を探し続ける。


「おう、わかった!」


その笑顔が欲しかった。


その交わらない心が欲しかった。


それでも、心さんの笑顔を守るためなら、俺の気持ちは閉じこめたままでもいい。


「原田、次からはサハに負けんじゃねーぞ!お前、結構強そうだしな!」


だから、俺が喜ぶような言葉をこぼさないでほしい。


「はい、わかりました」


じゃあ行きます、と心さんに頭を下げて背を向けようとした。


「原田!」


でも、心さんに呼ばれてすぐに振り向いた。なんて素早いんだ、俺。


「メリークリスマス」


心さんと過ごせたら、どれだけ幸せだろうか。ふと、そう思った。


「…………メリー、クリスマス」


去っていく小さな背中に向かって届かない声で呟いた。



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