心さん、そろそろ俺にしませんか?
「剣道部、悪い!失礼する!」
放課後、2ー1の教室で剣道部全員で勉強をしていた時、慌てた様子で心さんが入ってきた。
「吉野ー勉強道具を持って行き忘れたか!」
「ちげーよ。これ、忘れてたんだよ!」
キャプテンと言い合いながら、心さんが手にしていたのはピンクで彩られた雑誌。
「何の勉強すんだよ」
「もうすぐ女子にとって、大切なバレンタインのイベントがくるんだ!その勉強!」
「お前女子か?ていうか、真面目に勉強しろよ!赤点出たら、キャプテンが怒られ……」
「んなカリカリすんなよー。そんなんだとサワからチョコもらえねーぞ?じゃあな!」
「あっ、おい!お前っ」
赤面した状態で心さんを追いかけたキャプテン。途端にざわつきだす教室内。
「キャプテンってチア部の部長のこと好きなの?」
「あの可愛らしい人だよな?」
「ていうかもうすぐバレンタインじゃん!」
「やっべ、男磨きしね~と!」
そんな声が飛び交ったものの、
「黙れ。集中しろ」
佐原先輩の声で一瞬にして静まりかえった。よかった、話してなくて。