心さん、そろそろ俺にしませんか?
「もうすぐバレンタインだってよ、優生」
少ししてイチからひそひそと話しかけられた。周りでも教え合っているおかげか、佐原先輩から目はつけられていない。
「だからなんだよ」
「果たして、心さんからもらえるかな~」
それ、今頭の中をループしていたことだった。西川先輩にはあげそうけど、心さんにとってただの後輩の俺にはどうなんだろうって。
「ほしいですって言えよ~」
「お前じゃないし、んな図々しいことするかよ」
「図々しいことでもしね~とダメだろ?」
何も返す言葉がなくて、無意味にシャーペンをクルクル回す。
「俺も言ってみようかな~」
「心さんに?」
「そうだって言ったら?」
「おまっ、やっぱり心さんのこと……っ」
気づいたらイスから立ち上がっていた。当然、周囲から注目を浴びた。
「どうした、原田」
佐原先輩が獲物を狙うような目で俺を見た。
「いえ、その……何でもありません」
じろっとイチを睨みながら座る。一時はシンとしていた室内は少ししてまた、ボソボソと声が聞こえだした。