心さん、そろそろ俺にしませんか?
「なに……普通に話しかけてくんだよ」
必死の想いで、チョコを渡したんだと思う。渡そうか悩んで、それでも西川先輩に渡したくて。
「さっきのに対して、何か言えよな」
ポツリポツリと心さんが呟いた言葉は、俺へ向けられたものじゃない。見えなくなった西川先輩へ、だ。
「でも、これが西川なりの優しさか。だからあたしは諦めらんねーのかもなー」
ガシガシッと頭をかきながら、俺に向き合った心さん。
「頼む!原田、お前に宣言させてくれ!」
「え?」
「あたしの決意、聞いてくれるか?」
今日はバレンタイン。
「あたし、西川に告白する」
好きな人に告白するには、もってこいのチャンスの日。
「3年になる前に、想いを伝えてやる」
だけど、俺は今、好きな人が別の誰かに想いを伝える決意を目の前にして聞いている。
「何度でも振られてやる!」
こんなことを聞くために、俺はここに来たわけじゃなかったんだけどな。
チョコをもらえなくてショックというよりも、なんだろう。辛いとかそういう気持ちにもなれない。
西川先輩になりたい、そう思った。