心さん、そろそろ俺にしませんか?
もう、俺も限界です。
その日の部活が終わった後、心さんは本当に部員にチョコを配りに来た。俺達1年は目を輝かせて受け取ったものの、先輩達は強ばった表情。
「おい、ブチも食えよー!」
「いや!遠慮する!」
心さんに言われて、必死に拒否するキャプテン。他の先輩達も同じく頷く。珍しく佐原先輩までも。
そういえば、前に心さんの料理はヤバいって聞いたことがあるかも。もしかしてコレも?
チョコを溶かしただけだ!って言ってたから、大丈夫だよな?そう思って食おうとした時、
「……は、腹痛ぇ!」
1年の中で1人目の犠牲者が出た。左手で腹を抱えて、右手を必死に伸ばし、助けを求めている。
「うわっ、お、俺も……」
食った奴らが次々と倒れていく……マジかよ。
「お前らどうしたんだ?何か変なもの食ったんじゃねーのか?」
何も分からず、ケロッとした様子の心さんだが、先輩達からは『お前のせいだよ』の視線を向けられていた。
「優生、今食うか?」
「……いや、家で食う」
「だよな。いくらお菓子好きの俺でも、今食う勇気はないや」
イチがこういうなんて、よっぽどのことだ。