心さん、そろそろ俺にしませんか?
「じゃ、時間ヤバいしこれで。またな!」
「は、はい!」
駆けていく心さんの背中が小さくなっていく。その姿が見えなくなるまで心さんを見ていた。
「優生の惚れっぷり、相当だな」
すっかり忘れていたイチ。この声を聞いてコイツの存在を思い出した。
「は、走るぞ」
「今までサボってたくせに~」
「……うるせっ」
イチの反応を振りきるようにして再び走り出す。
せっかく心さんと話せてテンション上がってんのに、イチの一言で恥ずかしさしか残っていない。
「心さん……」
これからは、心さんって呼べるんだ。胸の中だけでなく、言葉にしていいんだ。
不謹慎かもしれないけど、今日部活に遅れてよかったかもしんない。
緩む顔をイチに見られないように必死に隠しながら、残りの外周を走った。