心さん、そろそろ俺にしませんか?



いつも、誰の目も気にせずに西川先輩を追いかけていた心さん。


誰が見ても心さんが西川先輩のことを好きっていうのは、一目瞭然としてわかった。


それくらい一生懸命で、不器用で、でも可愛くて。


いつだって、笑っていた。


いつだって、追いかけていた。


心のどこかでは、自分のことを見ていないってわかっていても、好きって気持ちは抑えられなかったんだ。


「なんで……あたしじゃダメなんだよ……っ」


心さんの表情は見えないけれど、西川先輩を想って泣いている。きっと、俺まで泣けてしまうくらいに。そんな彼女を見たくなくて、ただただ抱きしめていた。


それからどれくらい時間が経ったのだろう。気がつけば、空がオレンジ色に染まっていた。


「……泣きすぎたみたいだな」


俺の腕から離れた心さんが振り返って笑う。


「原田、ごめん。迷惑かけたな」


謝ってほしくない。そんな悲しそうな顔して、笑わないでください。


「……っすか?」


「え?」


だから、言ってしまったんだ。


「心さん、俺じゃダメっすか?」



< 188 / 387 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop