心さん、そろそろ俺にしませんか?
いつも、誰の目も気にせずに西川先輩を追いかけていた心さん。
誰が見ても心さんが西川先輩のことを好きっていうのは、一目瞭然としてわかった。
それくらい一生懸命で、不器用で、でも可愛くて。
いつだって、笑っていた。
いつだって、追いかけていた。
心のどこかでは、自分のことを見ていないってわかっていても、好きって気持ちは抑えられなかったんだ。
「なんで……あたしじゃダメなんだよ……っ」
心さんの表情は見えないけれど、西川先輩を想って泣いている。きっと、俺まで泣けてしまうくらいに。そんな彼女を見たくなくて、ただただ抱きしめていた。
それからどれくらい時間が経ったのだろう。気がつけば、空がオレンジ色に染まっていた。
「……泣きすぎたみたいだな」
俺の腕から離れた心さんが振り返って笑う。
「原田、ごめん。迷惑かけたな」
謝ってほしくない。そんな悲しそうな顔して、笑わないでください。
「……っすか?」
「え?」
だから、言ってしまったんだ。
「心さん、俺じゃダメっすか?」