心さん、そろそろ俺にしませんか?
「でもやってやろうって思えた。誰にでもあるチャンスじゃないから、余計燃えたな~」
キャプテンの名が定着している彼は、大きく口を開けて笑う。たったそれだけなのに、彼の偉大さを知らされた気がする。
「原田、お前はどうしたいんだ?」
そこで、しばらく静かだった心さんが口を開いた。俺は一瞬にして身を引き締める。
「……正直言うと、断ろうかと」
歩いている足は止めない。みんなも同じ。さっきと変わらず帰路を行く。
「どうして?」
「だって、俺がキャプテンっすよ?ただ背が高いだけで、キャプテンに相応しい要素って何も持ってないし……」
「じゃあ、キャプテンに相応しい要素って何だ?」
え?心さんに聞かれて返す言葉を失った俺。西川先輩とイチも何も言わない。
「ハキハキしてる奴?人をまとめられる奴?責任感が強い奴?どれかって言われても、答えらんねーだろ?」
「はい……」
「お前のその気持ちわかるよ。実はさ、あたしも去年、監督に呼び出されたんだ。キャプテンにならないかって」
え?
西川先輩も初めて聞いたのかもしれない。目を丸くして心さんを見ていた。