心さん、そろそろ俺にしませんか?
「森原のところに早く行くべきだな」
「はい」
「大丈夫だ。お前らの友情はそんな簡単に壊れねーだろ!」
心さんの言葉に押され、急いで教室に戻った。でも、イチの姿はなかった。陸達のところにもトイレにもいなかった。
「どこにいんだよ」
教室に戻ってきたのは授業が始まる時だった。案外真面目だから、サボることはないとは思ってたけど、明らかに元気がないイチ。
アイツ、俺が澤本に告られることを知ってて、あそこに連れて行ったんだよな。なんでそんなことしたんだよ。
好きな奴が他の奴に告るのを手助けするなんて、アイツバカだろ。そんなことを思いながら、午後の授業を終えて部活の時間を迎えた。
「イチ」
イチの元へ向かうものの、早足で教室から出て行ったイチ。くっそ、シカトかよ。俺は走らない程度に追いかけた。
「イチ!おい、待てよ」
「んだよ。部活に行ってるだけだろ」
「なんでシカトすんだよ」
「知るかよ。体が勝手に動くんだよ!」
俺達は前後で一定の距離を保って早足で部室へ向かいながら、言葉をぶつけ合っていた。