心さん、そろそろ俺にしませんか?



「まだ仲直りしてないのか」


数日後、白橋が呆れたように言った。


「……仲直りも何も、喧嘩じゃねーし」


「ぎこちないのはたしかだろ。ったく、剣道部全員困ってんだからな?部の重役が仲間割れしててどうすんだよ」


分かってるけど、イチとどう接していいかわからない。前と変わらず、澤本には声をかけられるし、返さないわけにもいかないし。


あの時、キッパリ澤本を振っていればよかったのか?でも、澤本を傷つけるし……いや、どっちにしろ傷つけてんのか。


「このままじゃ勝ち上がっていけないからな」


重たい言葉を残して、白橋は練習へ戻った。ふとイチを見ると、1年に熱く指導をしていた。
……俺も負けてらんねー。竹刀を握りしめてみんなの元へ戻った。


─────☆


「原田」


夏休みに入った。部活を終えて正門を出たところ、背後から声をかけられ、振り返ると心さんがいた。


「お、お疲れ様っす」


「お、おう」


今日はサッカー部の練習はないらしく、西川先輩の姿はない。っしゃ!と心の中でガッツポーズをする。


「あたし、明日から合宿なんだ」


ポツリと心さんが呟いた。



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