心さん、そろそろ俺にしませんか?
「これが最後の合宿だから、後輩達のことを容赦なくしごくつもりだ。……そして、喧嘩とかしてる奴等がいたら、即ぶっ飛ばしてやる」
チラッと俺の顔を見た心さん。……もしや、キャプテンや先輩達が何か言ったな。
「考えて見ろ。そんなことしてるのが無駄だ、時間の無駄。やるならよそでやれ。部活に私情を持ち込むな!」
心さんは怒っていた。
「だって、あたし達3年は最後なんだよ。お前らからすると、先輩達の思い出づくりに付き合わされてるとか思うかもしれない。でも、それくらいあたし達には、今の時間が大事なんだよ」
先輩達が俺とイチのことにツッコまないのは、無関心だからじゃない。最後の夏を精一杯過ごしてるんだ。
俺達には来年もある。だけど、心さん達や先輩達は、今しかない。
「すぐに仲直りすんのも面白くないから、一言ずつでも話せよ。おはようとかまた明日なとか」
面白くないって、面白がってるんすか。
「あ、1つ言っとくけど、お前が心配なんじゃない。剣道部の危機を心配してんだからな?」
「ありがとうございます」
「原……」
「合宿頑張ってください」