心さん、そろそろ俺にしませんか?
それを聞いた心さんはピタリと足を止めた。
「お前バカか。人のことよりまずは自分のことを心配しろ!」
そして笑いながら怒られた。
「お前らも合宿あんだろ?それに試合も。チームワークを築かねーと、乗り越えらんねーし、いくら目標を立てても何も見えてこねーぞ」
「……はい」
「しっかりしろよ、キャプテン!」
心さんに背中を押されると、不思議と力がわいてくる。恋の魔法なのか、それとも心さんパワーなのか。
「……心さん」
「なんだ?」
「出来るだけ、仲直りできるようにします」
どんなに毎日が笑えるとしても、やっぱりイチがいる毎日の方が断然楽しい。
ウザいくらい絡んでくる日もあれば、別人のように真面目な顔つきで隣にいるだけの日もあった。
そんなイチだから、安心していた。
「ぶはっ!当たり前だろ?」
心さんはそう言って、笑いながら背伸びをして俺の頭をバシッと叩いた。
「背、小さいっすね」
「お前がデカいんだ」
「否定はしません」
「お前なー!」
心さんがいるのに、どこか落ち着かない俺。きっと、イチがいないからだ。