心さん、そろそろ俺にしませんか?
「はい、素振り終わり!10分間の休憩な!」
キャプテンのかけ声を合図に、暑さにまみれた部員は水道へ向かった。俺も汗を拭い、いつもの休憩場所へ向かう。
イチとはギクシャクし始めてから、休憩時間をこの場所で過ごしていない。別に何ともって思っていたけど、思っていたより静かで物足りなさを感じていた。
昨日から夏休みが始まった。でも、イチとは元通りに戻っていない。
「おい」
誰かに肩を掴まれた。もしかして……と振り返ったら、イチではなく佐原先輩がいた。
「ブチが呼んでる。聞こえてねぇのか?」
ハッとしてキャプテンの姿を探すと、頭上からキツいゲンコツを食らった。
「お・ま・え・は、耳・が・ないのかぁ!」
「いっ、痛っ……痛いっす!」
その正体はキャプテンだった。ニヤリと笑って俺の隣に腰を下ろした。
「お前に話がある」
「は、はい」
「明日の夜、夜空鑑賞をするのはどうだ?というか、決定だ!今年は夏の終わりに大会を控えてるし、のんびりするなら今だと思うんだ!な、サハ」
曖昧に相槌をうつ佐原先輩。
「それに、いい加減こういうのやめにしてほしいからな~」
それは、俺とイチのことだろうな。