心さん、そろそろ俺にしませんか?
「……正直言うとさ、何を言えばいいかわかんねー。何を話せばいいのか分かんねーんだ」
俺とイチに直接何かあったワケじゃない。だから、自然とこの関係になってしまった今、言いたいことがうまく出て来ない。
「それ、俺もよく分かんね~や」
夕焼けの残りの光も消え去り、空は夜空へと化している。そんな中、イチの声が鮮明に聞こえた。
「お前、悪くないもん。だけど、悪いんだから」
「イチ」
「澤本のこと、なんで曖昧にすんだよ。なんでキッパリ傷つけなかったんだよ」
イチが怒ってるのは、澤本のこと。
「まだ頑張るからって笑うアイツ見てんの、すっげ~嫌なんだよ。お前のことをうっとりしながら見てるアイツが、すごくムカつく」
夜空に、一番星が見えた。
「そんな澤本じゃなくて、お前に八つ当たりする俺が一番ムカつくんだ……だから」
そこまで言って、イチが起きあがった。俺も同じようにあぐらをかいた状態で向き合った。
「一発、殴らせて」
今までコイツといたけど、こういうことを言われたことは無かった。
「いいよ、殴れよ」
だから、簡単に受けた。