心さん、そろそろ俺にしませんか?



「去年も言ったけどさ」


イチが目をこすりながら言う。


「この時間(とき)って、すっごく泣きたくなるな」


「もう泣いてんじゃん」


「あのな~、お前と仲直り出来て安心してんだよっ。笑ってんじゃねぇ!」


そう言って拗ねたイチだけど、俺も同じ気持ちだった。心底ホッとして、鼻の奥がツンとしてるんだ。


「お前ら仲直りしたか!」


すると、夜空が一気にキャプテンの顔が逆さま顔に変わり、俺の目の前に現れた。


「う、わっ!」


「んな驚くなよ~、原田も森原も~」


イチのところには、佐原先輩が無表情で覗き込んでいた。……それはそれで怖いと思えた。


「ったく、何があったんだよ~?」


やはり原因を聞かれるか、そう思った俺は苦笑いをするだけ。


「俺達、男同士の秘密です」


イチは、にっこりと笑いながらそう言った。


「俺とサハも男だぞ?」


「高2の男の悩みなんっす~!」


「何だよそれ~!」


言わないでいた、俺とイチのこと。秘密って程でもないけど……でも、言わなくてもいいやって思った。


これは俺達の秘密だもんな。


な、イチ。



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