心さん、そろそろ俺にしませんか?
「キャプテン、引き継げそうか?」
掃除の後、明日の練習メニューを話し合い、俺とキャプテンの目を見てそう言った監督。監督の宿泊部屋は俺達の部屋と違って狭く、距離も近く感じられる。
「あっ、まぁ……」
「いえ、まだまだです」
俺の返事を遮って答えた隣に座るキャプテン。
「まだ全然安心できません。でも、原田に伝えたいことはたくさんあるので、この夏でまずは6割教えられたらいいと思っています」
「そうか。原田お前は?」
「あっ、はい。学びます!」
途端に監督とキャプテンは笑い出した。何がおかしいのか分からず、俺は俯いた。
「下を向くな。前を見ろ」
監督がさっきまでの顔と違い、真っ直ぐに俺を見ている。自分の背筋が真っ直ぐになるのがわかった。
「お前、声が大きくなったな。体と同じくらいに。お前は成長し始めてるんだ。だから、その伸び止めるな」
これは褒められているのだろうか。とりあえず一礼をした。
「もうすぐキャプテンも終わりか~」
監督の部屋を出てから、通路にあるイスに腰掛けた俺達。窓越しの景色を見ながらキャプテンが言った。