心さん、そろそろ俺にしませんか?
試合モードに切り替わります。
「う~緊張!」
県立体育館の前。俺の隣で歯をガチガチにしながら震えているイチ。彼は決して寒いわけではない。今日は県大会なのだ。
「何度大会に出ても、緊張はしちゃうな~」
「あーまぁな」
「お。優生が賛成するとは珍しいじゃん」
「俺も人間だぞ。緊張するし」
そうだな、とゲラゲラ笑うイチ。笑う元気があるから大丈夫だと内心ホッとした。
顧問とコーチと合流して受付を済ませ、荷物を置いて更衣を済ませる。そして、試合に備えて外でウォーミングアップだ。
「んあ~県大会だぞ~サハ!」
「あぁ、眠い」
「話通じてねぇし!お前個人も団体も出んのに、緊張しね~のかよ~」
キャプテンが佐原先輩のやり取りを見て、部員達は笑った。
「緊張するよ。アイツ見に来るもん」
「え!嘘だろ!?」
「ほら、体動かすぞ」
そう言って、スタスタとその場を離れた佐原先輩。アイツ……って誰?
「キャプテ~ン、アイツって誰っすか?」
そこで、気になったことは聞くまで問いつめるイチの出番だ。
「あぁ、サハの彼女だよ」
薄々そう思ってたけど、やっぱりそうだったか。