心さん、そろそろ俺にしませんか?
イチの構え、竹刀の振り方。前回の試合よりも、上達しているように見える。
んだよ。喧嘩してる間にも上達しやがって。
右、左、相手を読み、相手に読まれて戦いは続く。どちらも勝ちを譲らないその姿に目を奪われ、イチの試合に見入っていた。
「勝負あり!」
接戦の勝敗が決まった。
「……やった」
イチの方に旗が上がった。まだ大将の試合があるから騒げないが、部員達の目は輝いていた。
相手への挨拶を終えて、戻ってきたイチ。俺が見ていたのに気づいたらしく、目が合うとへへっと笑ったイチ。緊張がほどけたような顔しやがって。
「はじめ!」
そして間もなく、大将同士の戦いが始まった。大将は3年生同士の戦い。俺達2年とは違い、迫力が強く、1年の差を見せつけられる。
団体戦のトリ。それに2ー2で引き分け状態。個人戦とは違い、チーム戦で個々の思いも受け継ぐ役目で、かなりのプレッシャーだと思う。
何度か団体戦も出たことがあるけど、個人戦とは違うプレッシャーがあって、負けた時は試合が終わっても仲間の顔色を伺ってたな。
竹刀が交わる。押して押されて、白線の外に出ないように戦う先輩の姿を、一時も目を逸らさずに見る。
「勝負あり!」