心さん、そろそろ俺にしませんか?
イチの眼差しを胸に焼付け、俺は体育館の中へ入っていく。
「個人戦組、行ってこい!」
監督や部員達が声をかける。個人戦で県大会を勝ち上がったのは、俺と佐原先輩、それにキャプテンだった。
「この大会を勝ち上がったら全国?」
「だな」
「うひゃ~やべぇな」
俺の前を歩くキャプテンと佐原先輩が言葉を交わす。次は全国、か。そこにたどり着くまでが長い道のりだけど、少しばかり胸が高鳴る。
「なんだ、原田。緊張してんのか?」
「い、いえ、別に」
「俺達は緊張してんのにな~サハ!」
「原田、リラックスだ」
「ってサハ、俺のこと無視!?」
なんていうか、キャプテンはイチで、佐原先輩は俺みたいな性格だな。そう思うことで、少しだけ緊張が解(ほぐ)れた気がした。そして3人で、個人戦に出場する人の収集場所へ向かった。
「お前どこ高?」
あぁ?誰だよ。ボーっとして立っていると、他校の奴から声をかけられた。
「…………西高」
「マジで?俺、桐生高やねん」
「ふーん」
「ふーんって、お前知らんのか?」
「何を?」
「俺ら、戦うんやで?」
そういえば、第1戦の相手って桐生高って監督が言ってたっけ?