心さん、そろそろ俺にしませんか?
「ふーん、そう。よろしく」
それだけ言うと、俺はそいつの前から歩き出した。
「ちょ、お前冷たいな~」
だが、背後からそいつに肩を掴まれ、身動きが出来ない状況になってしまった。ていうか、関西弁?
「……なんで関西弁?」
「俺、2学期から桐生高に転校したんや」
転校して約2ヶ月でレギュラーの座を奪ってんのか。結構大した奴じゃね?
「そうや。俺ん名前は五十嵐。俺強いから、気ぃつけや」
一瞬だけ、そいつに睨まれた気がした。少しだけ背筋に寒気が襲ったのは気のせいじゃないだろう。
「……原田だ。試合、楽しみにしてる」
俺達の間に火花が飛び散った。
─────☆
「五十嵐?そいつ全国で右手に入る奴だぞ、お前」
「え、そうなんすか?」
試合前、キャプテンが知らなかったのかよ、と驚いたように俺を見た。たしかに関西の奴がすげぇってのは聞いたことあるけど、さっきの奴だったとは。
「まぁ、俺も名前しか知らねぇけどな。全国に出たことあんのは、個人戦でサハくらいだし」
「佐原先輩っすか?」
「それすら知らなかったか?」
佐原先輩が顔を出した。