心さん、そろそろ俺にしませんか?
「……あっ」
五十嵐の素速さに唖然としてしまった。な、なんだ今の。速過ぎて何も見えなかった。呆然として五十嵐を見た。
──”楽勝、やな“
そういった目をして俺を見ていた。んだよ、その顔。すげぇムカつく。
「始め!」
そして、再び再開した試合。悔しがってる暇はねぇ。五十嵐に1本取られたんだ。取り返す……いや、その倍奪ってやる。
バシッ!
ダンッ!
それからは五十嵐と競り合い。1秒でも、1センチでも五十嵐からの距離がズレたら、確実に1本取られる。こんなに体は焦っているのに無心な俺。
それに、俺は五十嵐から逃げているだけ。五十嵐からの攻撃を抑えて逃げるのに精一杯だ。
こいつ……半端ねぇ。
「どうしたんや?来いや」
ボソッと話やがった五十嵐。ったく、お前にはそんな余裕があんのかよ。
「お前が来ぇへんなら、もっと攻めるで」
有言実行。
五十嵐が今までの倍以上に攻めてきた。こんのやろ、ふざけんなよ。
五十嵐の竹刀が体育館内に、俺の竹刀の悲鳴を響かす。
クソッ、何も出来ねぇじゃねぇかよ。