心さん、そろそろ俺にしませんか?




「そんなに長くかからへんから、安心してください」



そう言った五十嵐がニヤリと笑って俺を見た。俺だってそのつもりだ。早くお前を負かして見せるよ、五十嵐。



「始め!」



渋々試合を再開させた審判。心配されんのはありがたいけど、この試合を止められることは全く嬉しくない。



むしろ、迷惑。



「やぁっ!」



「めーんっ!」



当てて交わして、押して引いて。培ったカンと技術で五十嵐と競る。どちらも譲らない、勝利への道。



『みんな、全国まで俺にキャプテンでいて欲しいなら、勝ちあがれよ~!』



キャプテンの言葉を思い出す。負けたくない。俺のためにも、先輩達や部員達のためにも。



「うっ……!」



グキッと2度目の捻りが右足を襲った。痛みが半端ない。足に力が入んねぇ。



それに気づいた五十嵐が攻めてきた。俺の不幸は五十嵐にとっちゃ好都合だ。俺は必死に、左足を軸にして竹刀を握り締めて耐えた。



ズズッ……



だけど、五十嵐にどんどん後ろに押されていくばかり。踏ん張っても、左足だけじゃ耐えきれない。



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