心さん、そろそろ俺にしませんか?
「おい、大丈夫か!?」
監督が今までに見たことがないくらいの焦燥感で俺に呼びかける。
「あはは、ちょっとバランス崩しただけです。右足に限界が来たのかもなーなんて」
「アホ。素直に痛いって言え。とりあえず、医務室で見てもらうか。それ次第で次の試合に出られるか決まるからな」
やべぇ。この足だとおそらく……。そんな考えを抱きながら、部員に支えてもらって監督について行った。
─────☆
「君、何回痛いって思いました?これヒド過ぎますよ?」
「あっ、いって」
医務室にて、ハゲ頭の医者が俺の右足を見て触るなりそう言った。ヒド過ぎるのは、お前の頭の薄さだっての。
「こりゃ次の試合は出られませんね。棄権してください」
やっぱりか、と思った。
「絶対、出れませんか?」
「無理でしょう。捻挫だけでなく、おそらく踵を剥離骨折しています。バカ力を発揮し過ぎましたね。このまま試合に出ると悪化しますよ」
何だその笑顔。無性にムカつく。バカ力出して何が悪い?
「……分かりました」
「監督さんも御了承ください」
「あ、はい」
監督が小さく頷いた。