心さん、そろそろ俺にしませんか?




五十嵐は本気じゃなかった。その五十嵐に勝てても、素直に喜べないのは当然だ。



「くっそ、悔しい……」



五十嵐を本気に出来なかったこと、次の試合を棄権してこと、イチと勝ち上がるって約束したのに……守れなくなったこと。



「ごめんな、イチ」



「何言ってんだよ、お前勝ったじゃん。俺だったら五十嵐に勝てなかった。本当、優生すげぇよ」



「イチ……」



「優生が潮らしい顔してるとか気持ち悪!ほら、先輩達の個人戦もあんだぞ。俺達が応援しなくてどうすんだよ!」



そう言ったイチの瞳が微かに光ったのは、気のせいじゃない。俺は目に溜まった光を拭き取り、自分の両頬を叩いて気合を入れた。



「俺達は残念だったけどさ、まだ戦士はいるんだ。たくさんエール送んねぇとな?」



俺の肩に腕を回したイチ。バランスを保ちながら、再び体育館へと向かった俺達だった。



戻った時に、ちょうどキャプテンの試合が始まるところだった。俺はイスに腰を下ろして、試合を観戦した。



キャプテンはやっぱりすげぇや。普段はおちゃらけな人なのに、試合では全く顔が違う。別人みたいだ。



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