心さん、そろそろ俺にしませんか?
しかし、キャプテンは勝者にならず初戦敗退となってしまった。少し笑いながら俺達の元へ帰ってきたキャプテンだったけど、すぐに負けて悪かったと涙をこぼした。
キャプテンの高校剣道は終わってしまった。進路次第では剣道も続けたいって言っていたけど、こんなに真剣に剣道と向き合えることはもう無いだろうって言ってたことがあった。
先輩に……キャプテンに、全国に行って欲しかった。キャプテンを、全国に連れて行きたかった。
キャプテンの姿を見ていると、胸が熱くなって込み上げてくるものがあった。みんなから少し離れた俺は、少しだけ堪えきれなくなった涙を流した。
棄権……しなければよかった。意地でも試合に出るって言えばよかった。様々な後悔が胸を疼く。そう、自分のためだけじゃなくて、人のために戦いたいって思えていた。
「ブチ、お前の分まで俺が勝つ」
すると、キャプテンに佐原先輩が声をかけた。
「剣道部のためにも勝ってやる。そして、絶対全国に連れて行く」
キャプテンや先輩、それに俺達後輩へ投げ掛けられた言葉だった。佐原先輩はそれだけ残すと、スタスタと試合のコートへ向かった。