心さん、そろそろ俺にしませんか?
そして佐原先輩は、俺達の喜びをもっと大きくしてくれた。
「全国出場、おめでとうございます!!」
佐原先輩は、見事に全国出場を決めたのだ。惜しくも2位上がりだったが、全国で戦えるのに間違いはない。
「おい、原田」
そして試合の帰り。バスに揺られていると後ろの座席に座っていた佐原先輩から呼ばれた。俺の隣に座っているイチは夢の中だ。
「な、何すか?」
佐原先輩に呼ばれると変にドキッとする。何の悪さもした覚えはないんだけどな。
「五十嵐との試合どうだった?」
先輩なりに話題を作ってくれている、ということなのだろうか?
「五十嵐はその、やっぱり強かったです。試合中なのに話しかける余裕があって。五十嵐が本気を出してたら、今日は勝てていませんでした」
「五十嵐の奴、話しかけたのか?」
「はい」
佐原先輩が俺の顔をじぃっと見ている。その顔が座席の隙間から見えるから、少しホラーかも。
「言ってなかったか?五十嵐が話しかける時は相手の強さに内心焦ってて本気な時だ」
……今、なんと?
「だから、お前と戦ってた時のアイツはマジだったってわけ」