心さん、そろそろ俺にしませんか?
「それでそんなコイツから、心さんにお願いがあるみたいなんすよ」
「お願い?」
イチの言葉に、心さんがキョトンとした顔をする。実は、ココに来る前にイチに相談していたことがあった。
──心さんのメアドを聞く、ということ。
やっぱり好きな人の連絡先は知りたいしさ。一応、ダメ元でお願いしようぜってことを話し合ったんだ。そして、イチは俺にガッツポーズをして、一足先に武道館に戻った。
「お願いって?」
「その、俺……一応試合には勝ったんです」
「おう。ブチ達が言ってたから知ってるぞ」
あ、ちゃっかりキャプテンから情報は流れてたんすか。
「その、勝ったんで心さんに……心さんの連絡先を教えてもらえたらなって思ったんですけど」
今、女子並みに弱々しいし緊張してるよ、俺。
「そんなことか?んなの、試合結果関係なく聞けよな?」
「え?」
「今から練習始まるから、また後で教えるな!」
「あ、は、はいっ」
なんだ。いとも簡単に、連絡先を教えてもらう約束をしてしまったじゃねーかよ。
「じゃあな!」
後でまた会える口実が出来た。それが嬉しくて、俺は浮き足で武道館へ戻った。