心さん、そろそろ俺にしませんか?
「すみません、俺っ」
「んな顔すんな。この通り無傷だから、な!」
そう言いながら、ぶつかった衝撃で落としたのか、白組のハチマキを手に取りながら立ち上がった心さん。
「でも、一応保健室に……!」
「今から出る種目あっからイヤだね!」
「心さ……」
「擦り傷だけだから大丈夫!原田は係の仕事をしな!じゃあな!」
そう言って、心さんは編成所まで走って行ったのだった。
「原田くん、大丈夫?ちょっと押し付けすぎたね」
そう言って、リーダーが俺にハチマキを渡してきた。俺もポケットに入れていたのを、落としていたみたいだ。
「いえ、俺の不注意で……」
「心のことはあたしも注意して見ておくから、あんまり責任感じないでね」
この先輩、心さんの知り合いなのか。でもやっぱり心さんのことが気になるし、責任感じますよ。
《1着、白組吉野!》
放送係がマイクを通して歓喜をわかすアナウンスをする。グラウンドを見ると、徒競走を走りきった心さんが、白組のテントへ向かって、ガッツポーズをしているところだった。