心さん、そろそろ俺にしませんか?
差し入れのチャンスは図書館で。



「進路希望について紙配るぞー」


文化祭が終わって数日が経った。担任から配布されたのは、進路希望調査の紙。進路のことなんて何も考えていなかった俺にとって、まだ焦りはなかった。


「優生、進路のこと考えてた?」


放課後、部室で着替えている際にイチから聞かれた。


「いや、まだそんなに」


「実は俺も。やりたいことすら見えてねぇから、進路の紙配られても何も書けねぇよ」


イチの言葉を聞きながら、制服をたたんで鞄に押し込む。やりたいこと、か。


「優生はやりたいことってある?」


「俺は……」


何があるだろう。剣道?勉強?それとも料理をすること?考えればいろんな枝が見えてくるけど、イマイチピンとこない。


「今はさ、勉強と剣道と恋をすることが、俺にとって充実してるけどさ、ちゃんと先のことも頭に入れとかねぇといけないな~」


今が楽しければいい。そう思ってた。だけど、どこかで進路の話題を避けていたのかもしれない。



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