心さん、そろそろ俺にしませんか?
「はーい、それじゃあ今日の授業はここまで!」
数学の先生の一言で、シャーペンを手放した俺。周りの奴らも一気に気を抜く声が聞こえてくる。
「今日はさっき言ったように、p88~p120までの問題解いてこいよ」
「えー!?先生多いよー」
「お前ら来年受験だぞ?この量でヒーヒー言ってるけど、先輩達も今必死に勉強してるし、お前らも少しずつ自覚していかねーとな?そろそろテストもあるから覚悟しとけ?」
ニヤリと笑う数学の先生。受験って言葉を最近よく耳にするけど、まだ焦りはないし……自覚がないってことなんだろうな。
「優生~、食堂行ってくるけど」
「あ、俺も行く」
先生が教室を出た後、イチの言葉に応え、カバンから財布を取り、500円玉を1つ取り出した。
「珍しいな、お前が学食って」
食堂に向かっていると、イチが呟いた。
「まぁ……たまにはって思って」
「ふーん?とか言って、本当は陸達の話聞いて学食にするんだろ?」
「…………」
昨日、陸達と一緒に帰った時にアイツらが言ってたんだ。『お前の大好きな心さんが、最近食堂に来てっぞ!お前もたまには食堂来いよっ』……て情報を得たもので、今日には行動に移したわけだ。