心さん、そろそろ俺にしませんか?
「あ、どうも」
うろ覚えだった心さんの友達へ軽く頭を下げる。すると、心さんが振り向いて俺たちを見た。
「原田か!あれ?お前が学食って珍しいんじゃないか?」
「あ、はい……まぁ」
心さんに会うために学食だなんて……言えねぇ。
「聞いてくださいよ、心さん。今日コイツ寝坊したんすよ~!おかけで毎日恒例のお弁当も作り損ねて、学食になったらしいっすよ~」
イチの自然な嘘が、俺の焦りを救ってくれた。たまにはいいことしてくれんじゃんかよ。
「寝坊かー。疲れてんじゃねーか?」
「いやいや、違いますよ~!コイツ、心さんのことを考えすぎて」
「わっ、バカお前!」
余計なことを口走るイチの口を慌てて塞ぐ。やっぱコイツ油断できねーわ。
「ほ、ほら早く飯食うぞっ」
一人で恥ずかしくなってそそくさと学食を口にする。イチはクスクス笑いながら、俺の目の前に座って飯を食い始めた。
あーもう、クソ。心さんと会えて嬉しいのに、イチのバカが。さっきの最後まで聞かれてねぇよな?あーもう、食べ物の味なんて分かんねぇくらい焦ってるな、俺。