心さん、そろそろ俺にしませんか?
「周りからも結構厳しいって言われてて、勉強してもがむしゃら過ぎて……今もなかなか結果が出てなくて」
心さんの目線は徐々に下がっていった。
「でもさ、そんなあたしには、あたしの夢を反対しないで応援してくれる両親がいるんだ。あたしには、毎日一緒に勉強してくれる大事な……大事な友達がいるんだ」
少し弱々しい声が聞こえる。俺が聞く初めての心さんの声。
「それに」
そう言って、立ち止まった心さんは俺を見た。
「美味しい弁当を作ってくれた原田がいる……だろ?」
ニカッと笑う彼女。
その笑顔に、何度、胸が高鳴っただろう。
何度、思いを告げたいと思っただろう。
「だから、応援してくれよ。あたしセンターまでまだまだ頑張るから、思い出したらでいいから……心頑張れって応援してほしいんだ」
「応援するのは当たり前です。だって俺は……」
心さんのことが好きだから。
「心さんの後輩なんですから」
自分で言うとは、なんてバカなこと言ったんだろう……俺。自分で言ったくせに、さ。
「おう、そうだな」
ふっと笑う心さん。
これでいいんだ。心さんの笑顔が見られるなら、俺の気持ちなんてどうなってもいい。
ただ、心さんの辛い姿や涙は見たくないだけ。
そう、それだけ。