心さん、そろそろ俺にしませんか?
「なんだかんだ送ってくれてありがとな!」
心さんの家の前に着き、振り返って俺を見る心さん。今日初めて、心さんを家まで送ることが出来た。いつも途中で走って帰られたり話を切られたりして、送り損ねたからな。
「お前は1人で大丈夫か?なんなら途中まで」
「さっきも言ったじゃないっすか。俺は男っすよ」
「それでも、最近は男も女も変わりないし」
「大丈夫です。それじゃ、また学校で」
軽く頭を下げて心さんに背を向けた。
「原田っ、ありがとう」
心さんの声に、反射的に振り返ってしまう。
「弁当すっげー美味かった!礼ってわけじゃないけど、あたしの大学合格が決まったら……」
「心ー?帰って来てるの?」
いいところで、家の中から心さんの母親と思われる声が聞こえた。
「ごめん!じゃあ、そういうことで!」
そう言って片手を上げた心さんは、すぐに家の中に入っていった。
「……そういうことってどういうことだよ」
さっきの続きを聞きたかったのが本音だけど、期待はしないようにしよう。